いまの私達の家に引越すとき、他の小さな植木類は大抵移し植えたが、その無花果の木だけはそのままに残してきた筈だった。
私はその老人が何も言わずに気むずかしげに仕事をしつづけているのに気がねしながら、縁側に倚りかかって、緒方の出してきた袋の中から自分のもらうベイを選んでいる間も、絶えず隣りの家に気をとられていた。
そのときの私のおずおずした目にも、それはまあ何んとうす汚れて、みじめに見えたことか。
いまの私達の家に引越すとき、他の小さな植木類は大抵移し植えたが、その無花果の木だけはそのままに残してきた筈だった。
私はその老人が何も言わずに気むずかしげに仕事をしつづけているのに気がねしながら、縁側に倚りかかって、緒方の出してきた袋の中から自分のもらうベイを選んでいる間も、絶えず隣りの家に気をとられていた。
そのときの私のおずおずした目にも、それはまあ何んとうす汚れて、みじめに見えたことか。