それは「わが國のあらゆる重要な作品の裏には、家とか、ランプとか、火とか、酒とか、パイプなどがある」といふ「鷄とアルルカン」のなかの一句である。
永井の「巣の中」といふ作品の特徴は、さういふ傑作の裏側にあつてその作品を生き生きとさせてゐるもの、――例へば永井の場合では、「泉」や「繪本」などを裏打ちにしてゐるもの、――さういふものを逆に今度は作品の表面に持ち出したのである。
この一見他奇なく家常茶飯事を書きつづつたごとく見える作品が、この種の作品にありがちな無味乾燥に陷つてゐないばかりか、一種の遊離した美しさを獲ち得てゐるのは、この作品の裏側になつて、ほとんど人目につかずにゐる永井獨特の Imagination の力ではないか。