――私などがふだん接してそのお仕事ぶりを見てゐますと、實に室生さんは「仕事の雰圍氣」といふものを始終しつかりと掴んでいらしつて、一日とて油斷をしてそれを手離すやうなことをなさらない。
若しインスピレエションなんといふものがあるとしましても、それは室生さんにとつては、決して他の人達が考へるやうに遠くから來るものではなく、いつも室生さんの手の屆くところにゐるやうに、平生から飼ひ馴らされてゐるやうな感があります。
さうして室生さんはいつもさういふ「仕事の雰圍氣」といふものを大事にされてゐて、少しも無理強ひをなさらない、――如何にもすうつとその中にはひつて行つて、其處で一人で何か見えないものとはげしい格鬪をなされた後、又すうつとその中から何事もなかつたやうに出ていらつしやる。