山のうちの洞窟に棲まへる年老いたる半人半馬神が求道者メランプに向つて彼の若かりし日の妙なる陶醉を語つて聞かせる獨白體のわづか數頁足らずのものであるが、近代においてこれぐらゐ力強く魅力ある筆で古代の自由奔放なる世界をいきいきと描いたものは類を見ない。
モオリスはヴァル・ド・ラルゲノンに在りし冬の一日、嵐のさなかに荒れ狂ふブルタアニュの海をうち眺めつつこの作品の靈感を得たといはれる。
そののち巴里においてしばしばルウヴル博物館をおとづれて古代希臘の彫刻に親しんだりしてゐるうちに「サントオル」の完き想は成つたのである。