その谷間の雑木林はやっと芽を出したばかりだが、今日なんぞ、そこで焚木を拾っていたら、ぶんと蚋らしいものがいきなり飛んできて、私の顔のまわりにいつまでもつきまとっていた。
少しうるさかったが、なんだかちょっとそれに夏の気分を感じて、懐かしくもあった。
――それほどもう夏の或るものがついそこまで来かけているというのに、それを除いたすべてのものにはまだ春さえ充分には行き渡っていない。
その谷間の雑木林はやっと芽を出したばかりだが、今日なんぞ、そこで焚木を拾っていたら、ぶんと蚋らしいものがいきなり飛んできて、私の顔のまわりにいつまでもつきまとっていた。
少しうるさかったが、なんだかちょっとそれに夏の気分を感じて、懐かしくもあった。
――それほどもう夏の或るものがついそこまで来かけているというのに、それを除いたすべてのものにはまだ春さえ充分には行き渡っていない。