これは女房の奴には内証だが、私はこの屋根裏部屋にときどき閉じ籠っては、全く一人っきりで、昔の自分にそっくりそのままの自分に返って、心ゆくまで自分の青春に訣別を告げようという陰謀。
――が、その代り、階下の、女房と共同の部屋には、女房に買って貰ったトルストイ全集だの、ジャック・シャルドンヌの「祝婚歌」や「クレエル」などを積み重ねて、一方、大いに結婚生活者の心理研究もしようという感心な心がけさ。
……当分、そんな二種類の自分が、私の裡でお互いに勝手悪そうに同居しているだろうが、それはまあ仕方があるまい。