そのあとでお書きになったものを見ると、そのときの芥川さんにはふいと思い出されたそのボオドレエルの美しい一行が、よほど深く胸におこたえになったものと見えます。
「美しかれ、悲しかれ」――ああ、本当にこの言葉くらい僕に自分の若い時分のことを、その苦痛も歓びも、一しょに思い出させるものはありません。
フランシス・ジャムのさまざまな少女を唄った詩集を読んでいたきりぐらいの年少の僕がいきなりみんなの仲間入りをさせられ、みんなの生き抜こうとしていたはげしい青春に面接させられ、どれほど少年らしい戦慄と好奇心とをもってその新しい生を前にして足ぶみしていたことでしたろう。