ヒコさん――三代前は鎌田彦太郎と云ったが――ヒコさんはヅネエ、ということになって、烏賊ヒコ、その時以来、鎌田家は、烏賊ノブ、烏賊タツ、烏賊虎と伝承し、虎さんの長男、鎌田吉五郎はやがて烏賊キチとよばれるようになるはずである。
タイ釣りの名人を先祖にもつ瀬戸家は代々タイ七とかタイ平などゝよばれ、マグロ久やクジラ市やサメ六の先祖はそれぞれこれらの巨大な魚獣を相手に栄光かがやく戦績を残しているわけだ。
アジ文、野口文之助は現役で、つまりアジ家を起した初代であり、不漁になやむ晩夏、ヤケ半分にイワシを探して大島方面を回航するうちに、時ならぬアジの大群を発見した。