私の生れ育った新潟市は石油の産地であり、したがって石油成金の産地でもあるが、私が小学校のころ、中野貫一という成金の一人が産をなして後も大いに倹約であり、停車場から人力車に乗ると値がなにがしか高いので万代橋という橋の袂まで歩いてきてそこで安い車を拾うという話を校長先生の訓辞に於て幾度となくきかされたものであった。
ところが先日郷里の人が来ての話に、この話が今日では新津某という新しい石油成金の逸話に変り、現に尚新潟市民の日常の教訓となり、生活の規範となっていることを知った。
百万長者が五十銭の車代を三十銭にねぎることが美徳なりや。