麹町のあらゆる大邸宅が嘘のように消え失せて余燼をたてており、上品な父と娘がたった一つの赤皮のトランクをはさんで濠端の緑草の上に坐っている。
片側に余燼をあげる茫々たる廃墟がなければ、平和なピクニックと全く変るところがない。
ここも消え失せて茫々ただ余燼をたてている道玄坂では、坂の中途にどうやら爆撃のものではなく自動車にひき殺されたと思われる死体が倒れており、一枚のトタンがかぶせてある。
麹町のあらゆる大邸宅が嘘のように消え失せて余燼をたてており、上品な父と娘がたった一つの赤皮のトランクをはさんで濠端の緑草の上に坐っている。
片側に余燼をあげる茫々たる廃墟がなければ、平和なピクニックと全く変るところがない。
ここも消え失せて茫々ただ余燼をたてている道玄坂では、坂の中途にどうやら爆撃のものではなく自動車にひき殺されたと思われる死体が倒れており、一枚のトタンがかぶせてある。