彼は芸術を夢みていた。
その芸術の前ではただ一粒の塵埃でしかないような二百円の給料がどうして骨身にからみつき、生存の根底をゆさぶるような大きな苦悶になるのであろうか。
生活の外形のみのことではなくその精神も魂も二百円に限定され、その卑小さを凝視して気も違わずに平然としていることが尚更なさけなくなるばかりであった。
彼は芸術を夢みていた。
その芸術の前ではただ一粒の塵埃でしかないような二百円の給料がどうして骨身にからみつき、生存の根底をゆさぶるような大きな苦悶になるのであろうか。
生活の外形のみのことではなくその精神も魂も二百円に限定され、その卑小さを凝視して気も違わずに平然としていることが尚更なさけなくなるばかりであった。