それは彼の留守宅の近いところに空襲があり知らない変化が現に起っていないかという懸念であったが、その懸念の唯一の理由はただ女がとりみだして、とびだしてすべてが近隣へ知れ渡っていないかという不安なのだった。
知らない変化の不安のために、彼は毎日明るいうちに家へ帰ることができなかった。
この低俗な不安を克服し得ぬ惨めさに幾たび虚しく反抗したか、彼はせめて仕立屋に全てを打開けてしまいたいと思うのだったが、その卑劣さに絶望して、なぜならそれは被害の最も軽少な告白を行うことによって不安をまぎらす惨めな手段にすぎないので、彼は自分の本質が低俗な世間なみにすぎないことを咒い憤るのみだった。