然し、たまたま時世が時世であったから、人々は栗栖按吉の考え深い顔付を見ると、さては、という必要以上に大きな空気をごくりと呑んで、つまりこういう顔付が刑務所の鉄格子のあちら側にある顔だと思いこんでしまうのだった。
即ち、これが「主義者づら」だと思ったのである。
生憎なことに、この男には育ちの浅いところがあり、というのは、つまり諸々の人間はすでに数万年以前にゴリラとかチンパンジーというものから人間になってしまったというのに、この先生の祖先だけは漸く二三百年ぐらい前にコンゴーのジャングルからやおら現れてきたばかりだという面影があった。