一足彼等の世界をでると、つまり淪落の世界に属さぬ人々に接触すると、彼等は必ずしも仁義を守らぬ。
なぜなら淪落の人々は概ね性格破産者的傾向があるし、又いくらかずつ悪党で、いわば自分自身を守るために、同僚を守ったり、彼等の秩序を守ったりするけれども、外部に対してまで秩序を守る必要を認めないからでもあるし、大体が彼等の秩序と一般家庭の秩序とは違っているから、別に他意がなくとも食い違うことが出来てしまう。
乞食を三日すると忘れられない、と言うけれども、淪落の世界も、もし独立不羈の魂を殺すことが出来るなら、これぐらい住み易く沈淪し易いところもない。