彼の剣法は常に敵に応じる「変」の剣法であるが、この最後の場へ来て、鞘を海中へ投げすてた敵の行為を反射的に利用し得たのは、彼の冷静とか修練というものも有るかも知れぬが、元来がそういう男であったのだ、と僕は思う。
特に冷静というのではなく、ドタン場に於いても藁をつかむ男で、その個性を生かして大成したのが彼の剣法であったのだ。
溺れる時にも藁をつかんで生きようとする、トコトンまで足場足場にあるものを手当り次第利用して最後の活へこぎつけようとする、これが彼の本来の個性であると同時に、彼の剣法なのである。