五万円というものもあるし、三十円ぐらいの悲しいような石もあって、稀には、月給がいくらボーナスがいくら昇給するようにと詳細に数字を書いた石もあった。
節分の夜、燃え残った神火の明りで、この石を手に執りあげて一つ一つ読んでいたが、旅先の、それも天下に定まる家もなく、一管のペンに一生を托してともすれば崩れがちな自信と戦っている身には、気持のいい石ではなかった。
牧野信一は奇妙な人で、神社仏閣の前を素通りすることの出来ない人であった。
五万円というものもあるし、三十円ぐらいの悲しいような石もあって、稀には、月給がいくらボーナスがいくら昇給するようにと詳細に数字を書いた石もあった。
節分の夜、燃え残った神火の明りで、この石を手に執りあげて一つ一つ読んでいたが、旅先の、それも天下に定まる家もなく、一管のペンに一生を托してともすれば崩れがちな自信と戦っている身には、気持のいい石ではなかった。
牧野信一は奇妙な人で、神社仏閣の前を素通りすることの出来ない人であった。