土居光一は画家の中では挿絵をかいたりして収入のある方だが、この物価高ではタカの知れた収入で、一足の絹靴下も買ってもらえない。
一馬の方は元来が大金満家の御曹子のところへ、時局的にも酒造家であり、数十万町歩の山林は持っている、イヤでも闇の大金がころがりこむ、上京のたびに金庫からチョッと一つかみ札束つかんでくる、一つかみぐらい減ったって減ったあとも分りやしないが、鼻紙みたいに掴んでくる札束が七八万円はあるという下々には見当もつかない景気で、遊ぶこと、おいしい食べもの、美しい着物、豪奢の好きなあやかさんはお金に惚れてしまった。
アッサリ土居光一に引導を渡して、正式に一馬と結婚した。