万事につけてひどく愛くるしいから、クレオパトラのようなツンとした女王性は微塵もないけれども、わがままであり、人の心をシンシャクしない。
女房の義務など考えていないから、亭主へのサービスなどは思ったこともなく、したがって、亭主が何をしても平気の平左という様子、これが一馬には物足りない。
自分一人を特別の男として特別に見てくれる風がないから、ノレンに腕押しの力負けで、物足りなかったり、不安であったり、無念であったり、それで恨みを述べると、あべこべに立腹されてしまうから、一馬先生顔色を失い、このところ全く圧倒されて、男一匹、わが身の拙なさ、だらしなさ、それとなく懊悩、叛逆の色も深い。