この三輪山中、ブナの密林にかこまれて周囲三町ぐらいの池があり、水の色の碧の深さ、ただならぬ妖怪じみた色をしており、主でも棲むという面魂、三輪の神様に結びついた伝説があって、水の涸れることがないそうだ。
このへんの風景は色彩の激しさと孤独の深さ、胸にしみる静寂を宿して、私にとってはこの村の最も大きな魅力であった。
このへんを一まわりして、七時半の朝食に間に合うように戻ってきて、裏門をくぐって、酒倉にそって表門へ廻ろうとすると、猿又一つの海老塚医師が、裏庭の清水の流れにカラダをふいて、体操している。