「神山は以前父の秘書だったが、その後、秘書をやめてからも、出入りをつづけているのだけれども、父が弱身を握られていて、たぶんユスラレているのじゃないかと想像できるだけ、父にきいても、深い事情はきかせてくれないから知らないのです。
昨年死んだ母が、神山を毛虫のように厭がっていました。
嫌い方が尋常一様のものじゃないので、もしや母についての秘密じゃないかと思ったこともあったけれども、みんな僕の想像で、ともかく僕の親父は相当に策略的な政治生活をやっていたから、ユスリの種は相当あるのが当然で、子供の僕が、それをたって訊きただすわけにも行かないから、きいてみたこともなかったのです」