現場の検視が終ったころ千草さんの遺骸と一緒に、県立病院の医師が出張して、草林寺の本堂を解剖室に仕立てて、新しい二つの屍体の解剖が行われた。
千草さんの殺されたのは十八日午後六時から七時の間、セムシ詩人の殺されたのは、夜の十一時から十二時ごろの間と推定されたが、内海は寝床の中でラクロの「危険な関係」を読んでいたらしく、本をふせて寝台を下りて、殺されたもののようで、便所へ立って戻ってきて殺されたのか、犯人を室内へ迎え入れて殺されたか、たぶん顔見知りの仲で、殺意を全く覚らぬうちに背後から脇腹を刺され、よろめいて、のめったところをメッタ刺しに刺しこまれ、心臓を刺された時はもう完全に死んだあとで、それを又、俯伏せに戻して頸を刺したらしい。
つまり顔見知りの犯行なのである。