千草さんの殺されたのは十八日午後六時から七時の間、セムシ詩人の殺されたのは、夜の十一時から十二時ごろの間と推定されたが、内海は寝床の中でラクロの「危険な関係」を読んでいたらしく、本をふせて寝台を下りて、殺されたもののようで、便所へ立って戻ってきて殺されたのか、犯人を室内へ迎え入れて殺されたか、たぶん顔見知りの仲で、殺意を全く覚らぬうちに背後から脇腹を刺され、よろめいて、のめったところをメッタ刺しに刺しこまれ、心臓を刺された時はもう完全に死んだあとで、それを又、俯伏せに戻して頸を刺したらしい。
つまり顔見知りの犯行なのである。
だから蘇生を怖れて執拗にメッタ刺しに刺しぬいたに相違ないという話であった。