概して自殺者は、自然のままに飛びこむよりも何らか人為を施すもので、たとえば履物をぬぐとか、持物を地上に置くとか、時には裾の乱れをふせぐために両足を着衣の上から縛るとか、しかし、これも、むろん絶対のものではありませんから、宇津木さんが何一つ人為をのこさずハンドバッグをかかえ履物のまま飛びこんでいても、だから他殺だと断定するわけにも行きません。
ただ、今までの解決不明の数々の事件の後の出来事としまして、我々はこれをも一つの殺人と解して捜査に当ることが当然だろうと考えるだけの次第です」
カングリ警部は先ずこう挨拶をのべた。