然し、もとより、私のハナレへは宿の者もめったに来ることがないから、私が釣のふりをして、三輪山へ行き、秋子女史を殺してくるという芸当が不可能なわけではない。
カングリ警部もぬからず、そのへんはとっくに思いめぐらしている筈で、彼が特別、バスの時刻表を睨めまわしてチクチクとつついているのは、たとえば木ベエの場合などは、実際に始発のバスで行ったかどうかも明かではなく、始発で行ったにしても、引返して、秋子さんを殺しておいて町へ戻り、五時のバスで帰ってくるということも考えられるからであろう。
完全に容疑者のうちから除外できるのは、胡蝶さんと人見小六、これは十時から三時まで青年会と処女会の連中に、講演と実習をやっており、又、神山とピカ一は巨勢博士と共に賭けの玉ツキにかかりきっていた。