あるいは又、犯人はかねて加代子さんのコーヒー茶碗がカケたものである筈のことを知ってはいたが、一々コーヒー茶碗をしらべる余裕がなかった。
そこでトッサに目についたカケ茶碗に毒薬を投入した、というような火急の場合による手違いも有り得たろうと思われます。
以上のべました通り、加代子さんがこの食堂へ現れた場合はカケたコーヒー茶碗を用いるであろうということを知っているには、この家の調理場の事情に精通しなければならない道理で、然し、元来、加代子さんの殺害を企む以上、その犯人は当家に精通したものに限られている筈であります」