私は又ピカ一を見たが、彼はすでに吾関せず、全然人ごとのように、勝手にしやがれ、バカバカしいという様子であった。
「あの夜、九時何分ごろでしたか、お由良婆さまと諸井看護婦が広間へはいってきて、千草さんは六時ごろアイビキにでかけた、その手紙を諸井看護婦が見せられた、男の名前も知っている、それと判ったときの土居画伯あやか夫人の驚愕顛倒いかばかりであったか、もはや計算、熟慮の余地もありません。
千草さんが殺されたとは知らないから、諸井看護婦はアイビキの男の名前の言明をはばかりましたが、兇行が発見されれば、それを言わずにいられる筈はありません。