皆さんも、あの日のことはなお御記憶に明かなことと思いますが、さっそく平野警部の訊問があった折に、あやか夫人は土居画伯を指して犯人とよび、指の魔術師とよびました。
すると、土居画伯は平然として、かたわらの碁石をつまみ上げ、黒白夢幻の恋の巻、ハイ、東西東西、悠々と指の魔術を御披露あそばされたものです。
のみならず、それが終って、尚言い争い、土居画伯が、自分もいつ毒殺されるか分らない、こんな家にいたくない、と申されますと、お前が犯人じゃないか、お前のほかに誰が毒をもるものですか、あやか夫人がそう叫ばれた。