ひとつ、下枝は歌川家に召使わるること、という条より始まり、つまり、下枝というヒナには稀れな美少女が歌川家へ召抱えられる事となり、多門老人の腰元となって侍くうち、つれづれなるままに多門の書架より古今東西の探偵小説をとりいだして読むうちに、持って生れたる殺人鬼の毒血はここにムラムラとよみがえり、夜となく昼となく血の惨劇を思いふけって、ここに不連続殺人事件の幻想を構成し、ついにこれを実行するに至るテンマツを、古風優美な物語にこしらえあげていられるのである。
これは作者の虚をついた妙作であった。
熱心な答案をお寄せ下さった皆様方、又、愛読を賜わった皆様方に厚く御礼申し上げます。