紫の大納言は、二寸の百足に飛び退いたが、見たこともない幽霊はとんと怖れぬ人だったから、まだ出会わない盗賊には、怯える心がすくなかった。
それゆえ、多感な郎子たちが、心にもあらず、恋人の役を怠りがちであったころ、この人ばかりは、とんと夜道の寂寞を訝りもせず、一夜の幸をあれこれと想い描いて歩くほかには、ついぞ余念に悩むことがないのであった。
一夜、それは夏の夜のことだった。
紫の大納言は、二寸の百足に飛び退いたが、見たこともない幽霊はとんと怖れぬ人だったから、まだ出会わない盗賊には、怯える心がすくなかった。
それゆえ、多感な郎子たちが、心にもあらず、恋人の役を怠りがちであったころ、この人ばかりは、とんと夜道の寂寞を訝りもせず、一夜の幸をあれこれと想い描いて歩くほかには、ついぞ余念に悩むことがないのであった。
一夜、それは夏の夜のことだった。