これだけの条件の下でこれだけの秩序が保てれば見上げたもので、日本人のたのもしさ、力強さに気づくことを知らないようでは、その人の方が暗愚であり、つまり敗戦と共に亡びて然るべき誤れる憂国者、誤れる道徳家、唯我独尊的愛国自認者であるにすぎない。
私はむしろこの悪条件の下で、却って秩序が保たれすぎるのじゃないかと思って、不安になることが多い。
戦争と云えば戦争、民主々義と云えば民主々義、万事お上にまかせてクルリと変るばかりで、犬のように従順であるというだけ、その軽薄な気質が現下の秩序のもとで、そしてそういう人々に限ってやたらに道義とかなんとか他人のお行儀のことばかり気にかける。