幸いコショーがきいてどっちの涙だか分らない様子になることができて、いくらか切なさをまぎらすことができたが、こんな羞しい思いをして再びイクラデスかなどゝ呼びかけるぐらいなら、食い逃げの悪党を気取って、黙って悠々と店を出て、泥棒と呼ぶ三人の女に襟首をつかまえられて、セセラ笑って――それから、どうなるか、どうなってもいゝ、それぐらいの激しい汚辱に立ち向いたい、そこまで空想すると感きわまり、嗚咽をおさえることができなくなった。
そこへ五人づれの大学生がドヤ/″\とはいってきた。
それを見ると三人の女はにわかに生き生きと立ち上って、イラッシャイとか、どうしたの、とか、昔の記憶にも確かに在ったと同様のお客と女給の言葉が交換されるのであった。