「コンドル」という、これはつまらない映画であったが、然し、そのなかで、墜落事故で瀕死の飛行士が、これから死ぬから、みんな別室へ行ってくれ、死ぬところを見られたくないから、という場面があって、身につまされたことがあった。
もっとも、人は病気になり高熱になやむときには、幻覚と孤独感に苦しめられ、非常に人がなつかしくなるもので、病床の身辺に誰かゞいて起きていてくれないと夜など寂寥に息絶ゆる苦悶を覚えるものであるから、凡愚の私が死床で孤独でありうる勇気があるのかはかりがたいけれども、身辺の人のほかに、死ぬところなど、見ていてもらってはやりきれない。
人間は生きているうちが全てゞある。