もっとも、人は病気になり高熱になやむときには、幻覚と孤独感に苦しめられ、非常に人がなつかしくなるもので、病床の身辺に誰かゞいて起きていてくれないと夜など寂寥に息絶ゆる苦悶を覚えるものであるから、凡愚の私が死床で孤独でありうる勇気があるのかはかりがたいけれども、身辺の人のほかに、死ぬところなど、見ていてもらってはやりきれない。
人間は生きているうちが全てゞある。
社会人としての共同生活でも、生きている人のためには、色々とはかりたいが、死んでしまえば、もう無、これはもう、生きた生活とはかゝわりがない。