坂口安吾
あの日は何月何日だったか、その前夜、雑誌の用で、たしか岩田専太郎先生の小説を持ってきて、私にサシエをかけ、という難題をフッかけにきたサロンのチンピラ記者、高木青年が、ちょッと顔をあからめなどして、ボク、アスは社用によって見合いでして、朝十時、早いです、これからウチへかえってズボンをネドコの下へしいてネオシをして、エヘエヘとロレツのまわらないようなことを言いだした。
ちょうどその時、私のウチへ遊びにきて一しょに晩メシを食っていたのが、これは去年の暮まではさる料理屋の亭主の奥さんで、今年の春はこれもどこかのチンピラ記者の奥さんに早変りをとげているという脳味噌が定量とかけはなれている女性が居合わして、