酔ふために飲む酒だから、酔後の行状が言語道断は申すまでもなく、さめれば鬱々として悔恨の臍をかむこと、これはあらゆる酒飲みの通弊で、思ふに、酔つ払つた悦楽の時間よりも醒めて苦痛の時間の方がたしかに長いのであるが、それは人生自体と同じことで、なぜ酒をのむかと云へば、なぜ生きながらへるかと同じことであるらしい。
酔ふことはすべて苦痛で、得恋の苦しみは失恋の苦しみと同じもので、女の人と会ひ顔を見てゐるうちはよいけれども、別れるとすぐ苦しくなつて、夜がねむれなかつたりするものである。
得恋といふ男女二人同じ状態にあるときは、女の方が生れながらに図太いもので、現実的な性格がよく分るものであり、だから女の酒飲みが少いのかも知れぬ。