何杯ぐらゐ飲んだか忘れたが、とにかく無茶な娘で、モナミだつたかどこかでテーブルの上のガラスの花瓶をこはして六円だか請求されると、別のテーブルの花瓶をとりあげてエイッと叩き割つて十二円払つて出てくる娘であつた。
しよつちう男と泊つたり、旅行したりしてゐたが処女なので、娘は私に処女ではないと云つて頑強に言ひ張つたけれども、処女であつたと思ふ。
日本橋にウヰンザアといふ芸術家相手の洋酒屋ができて、そこの女給であつたが、店内装飾は青山二郎で、牧野信一、小林秀雄、中島健蔵、河上徹太郎、かう顔ぶれを思ひだすと、これは当時の私の文学グループで、春陽堂から「文科」といふ同人雑誌をだしてゐた、結局その同人だけになつてしまふが、そのほか中原中也と知つたのがこの店であつた。