尤も、有名になり、金を握つてみて、その馬鹿らしさにウンザリしたといふなら、それもそれで結構だけれども、自ら落伍者で甘んじる、たゞ仕事だけ残せばいゝといふ、その孤独な生活によつて仕事自体が純粋高尚であり得るといふ性質のものではない。
現世的に俗悪であつても、仕事が不純でなく、傑れたものであれば、それでよろしいので、日本の従来の考へ方の如く、シカメッ面をして、苦吟して、さうしなければ傑作が生れないやうな考へ方の方がバカげてゐるのだ。
清貧に甘んじるとか、困苦欠乏にたへ、オカユをすすつて精進するとか、それが傑作を生む条件だつたり、作家と作品を神聖にするものだといふ、浅はかな迷信であり、通俗的な信仰でありすぎる。