江戸の精神、江戸趣味と称する通人の魂の型は概ね荷風の流義で、俗を笑ひ、古きを尊び懐しんで新しきものを軽薄とし、自分のみを高しとする、新しきものを憎むのはたゞその古きに似ざるが為であつて、物の実質的な内容に就て理解すべく努力し、より高き真実をもとめる根柢の生き方、あこがれが欠けてゐる。
これの卑小を省る根柢的な謙虚さが欠けてゐるのだ。
わが環境を盲信的に正義と断ずる偏執的な片意地を、その狂信的な頑迷固陋さの故に純粋と見、高貴、非俗なるものと自ら潜思してゐるだけのこと、わが身の程に思ひ至らず、自ら高しとするだけ悪臭芬々たる俗物と申さねばならぬ。