然し、それは文学に限つたことではなく、哲学も宗教もさうであり、否、すべて人間誰しもが、各々如何に生くべきか、より良き生き方をもとめてやまぬものである故、その人間のものである文学も亦、さうであるにすぎないだけの話である。
然し文学は、たゞ単純に思想ではなく、読み物、物語であり、同時に娯楽の性質を帯び、そこに哲学や宗教との根柢的な差異がある。
思ふに文学の魅力は、思想家がその思想を伝へるために物語の形式をかりてくるのでなしに、物語の形式でしかその思想を述べ得ない資質的な芸人の特技に属するものであらう。