ラバウルから突如としてサイパンがやられる。
私は映画屋のともかく片隅の一員で試写室でニュース映画から、専務の部屋で専務から、いくらか時代の空気を見聞して、それだけが私の時代との接触で、あとの一週間の六日間はたいがい碁会所で碁を打つてゐる。
けれども日本はもう駄目だといふことは私のやうな者の目にも先づ明かで、やがて日本は廃墟となる、その中で否応なく立籠らねばならないので、軍部の一ツ文句ではないけれども最悪の事態環境の中で困苦欠乏にたへる精神でなくて私の方の考へでは肉体が、ともかく最後まで生き残りうる条件だと考へた。