私は戦争を「見物」したかつたのだ。
死んで馬鹿者と云はれても良かつたので、それは私の最後のゼイタクで、いのちの危険を代償に世紀の壮観を見物させて貰ふつもりだつた。
言ふまでもなく、決して死に就て悟りをひらいてゐるわけではない私が、否、人一倍死を怖れてゐる私が、それを押しても東京にふみとどまり、戦禍の中心に最後まで逃げのこり、敵が上陸して包囲され、重砲でドカ/\やられ、飛行機にピュー/\機銃をばらまかれて、最後に白旗があがるまで息を殺してどこかにひそんでゐてやらうといふのは、大いに矛盾してゐる。
私は戦争を「見物」したかつたのだ。
死んで馬鹿者と云はれても良かつたので、それは私の最後のゼイタクで、いのちの危険を代償に世紀の壮観を見物させて貰ふつもりだつた。
言ふまでもなく、決して死に就て悟りをひらいてゐるわけではない私が、否、人一倍死を怖れてゐる私が、それを押しても東京にふみとどまり、戦禍の中心に最後まで逃げのこり、敵が上陸して包囲され、重砲でドカ/\やられ、飛行機にピュー/\機銃をばらまかれて、最後に白旗があがるまで息を殺してどこかにひそんでゐてやらうといふのは、大いに矛盾してゐる。