戦争といふ奴ばかりは偶然だ。
どこからそれ玉がとんでくるか、こればかりは仕方がないので、私はともかくドラム缶に差当り必要な食糧と寝具をつめて土の中へ埋めておいて、生き残つたときの役に立てるつもりであつた。
そこで私は裏の中学の焼跡で機械体操の練習を始め、脚力と同時に腕の力を強くする練習を始めて、毎日十五貫の大谷石を担いで走る練習を始めたのだが、もう夏になつてゐた、私はパンツ一つの素ッ裸でエイヤッと大谷石に武者ぶりつき荒川熊蔵よろしく抱きあげるのだが、おかげで胸から肩は傷だらけ、腕はミヽズ腫れが入り乱れてのたくり廻つてゐる勇しさで、全くどうも、頭の上にはB29がひどくスマートな銀色をピカ/\させて飛んでゐるといふのに、地上の日本は戦国時代の原始へもどつて、生き残る訓練だといつて、大谷石に武者ぶりついてゐる。