どこからそれ玉がとんでくるか、こればかりは仕方がないので、私はともかくドラム缶に差当り必要な食糧と寝具をつめて土の中へ埋めておいて、生き残つたときの役に立てるつもりであつた。
そこで私は裏の中学の焼跡で機械体操の練習を始め、脚力と同時に腕の力を強くする練習を始めて、毎日十五貫の大谷石を担いで走る練習を始めたのだが、もう夏になつてゐた、私はパンツ一つの素ッ裸でエイヤッと大谷石に武者ぶりつき荒川熊蔵よろしく抱きあげるのだが、おかげで胸から肩は傷だらけ、腕はミヽズ腫れが入り乱れてのたくり廻つてゐる勇しさで、全くどうも、頭の上にはB29がひどくスマートな銀色をピカ/\させて飛んでゐるといふのに、地上の日本は戦国時代の原始へもどつて、生き残る訓練だといつて、大谷石に武者ぶりついてゐる。
環境が退化すると四十年間せつせと勉強した文明開化の影もなく平然と荒川熊蔵になり下つて不思議がつてもゐないので、なぜに又十五貫の大谷石に武者ぶりつくかといふと、決して物を担いで逃げようなどゝいふサモしい量見ではないので、物はドラム缶に入れて地下に隠してある、逃げる私は飛燕の如く身軽なのだが、穴ボコに隠れて息をひそめてゐて、爆風で穴がくづれた時に外の人間が圧しつぶされても、私だけはエイエイヤアヤッと石や材木をはねのけて躍りださうといふ魂胆。