負けいくさの戦争は全く小気味がいゝほど現実に幻想的だ。
工夫に富めるラ・マンチャの紳士ドン・キホーテと云ふけれども、私の方では一向に笑ひ話ではないので、戦争中の私を通観すれば、あんまり工夫に富んではゐなかつたが、然し、ともかく、サンチョ・パンザよりはいくらかましな工夫をめぐらして、それが一向にをかしくもなんともない。
一方、頭の上にB29といふ厭にスマートな文明の利器がすい/\空をとんでゐるだけ、セルヷンテス以上に奇怪な幻想的風景なのだが、それが微塵もフィクションではない、ギリ/\の生活だから笑はせる。