私はそのころ、キタ助だのサブ郎などゝいふ六区の役者と友達で、木村からもらつたお金で二人にお小遣をやつたり、着物をこしらへてやつたり入りあげるやうなふうを楽しみに遊んでゐたが、木村はキタ助やサブ郎を座敷へよんでヒイキにしてくれて、ちつともこだはらなかつた。
キタ助だのサブ郎は役者根性で、座敷へよばれてお金をもらつたりすると、すぐヘイツクばつて自然に幇間になつてしまふ。
そのくせ蔭で木村の悪口を言ひ、いかにも自分たちが色男で女にもてる性で、自分たちをヘイツクばらせて三文の得にもならず金も女も失ふばかりの木村は馬鹿野郎だとせゝら笑つてゐる。