金が宇宙の中心だといふのは彼の説で、だから彼は哲学などは馬鹿らしくなつてしまつたのである。
終戦後、破壊のあとは万事享楽から復興するといふ彼の明察によつて、富子の母の旦那からお金を貰はせて、駅前の横町へバラックをたて、一杯飲み屋を始めた。
彼はカントの流儀によつて哲学は又食通だといふ建前で、ソースなどは自分で作れるぐらゐ、昔は相当料理の本を読んで、牛の脳味噌、牛の尻尾、臓モツの料理、雉の腹へ色々の珍味をつめて焼きあげる奴、マカロニ料理からチャプスイに至るまで自ら料理のできるほど色々と通じてゐる。