けれど酔つ払ひはブレーキがないから、味をしめて瀬戸のゐる時にもやられると困ると思ふから、大いにチップにありつきたくて仕方がないが、どうにもダメで、やむなく変な風にニヤ/\笑つて尻ごみする。
そのニヤニヤがなんとなく色好みらしく、その気がある様子に見えてカン違ひをする客もあり、おい泊りに行かうなどゝ札束をみせて意気込んでくる五十男があつたりすると、まつたくもう泊つてやらうか、金のためには何でもするといふやうな気持にもなりかけるほどだつた。
恋のためではあるけれども、さしせまつた現実の問題としてはたゞ金で、金々々、まつたく宿六の守銭奴が乗りうつり、金銭の悪鬼と化し、金のためには喉から手を出しかねないあさましさが全身にしみつき、物腰にも現れてゐる感じであつた。