ほかの人の顔は、戸を開けるや否やすぐ分ったが、たった一人余に背中を向けて椅子に腰をおろして、鼠色の背広を着て、長い胴を椅子の背から食み出さしていたものは誰だか見当がつかなかった。
横へ回って見ると、それが長谷川君であった。
その時余は長谷川君に向って、「ちょっと御訪ねをしようと思うんだが」と言い出して、まだ句を切らないうちに、君は「いや低気圧のある間は来客謝絶だ」と云った。
ほかの人の顔は、戸を開けるや否やすぐ分ったが、たった一人余に背中を向けて椅子に腰をおろして、鼠色の背広を着て、長い胴を椅子の背から食み出さしていたものは誰だか見当がつかなかった。
横へ回って見ると、それが長谷川君であった。
その時余は長谷川君に向って、「ちょっと御訪ねをしようと思うんだが」と言い出して、まだ句を切らないうちに、君は「いや低気圧のある間は来客謝絶だ」と云った。