廊下を歩く看護婦の上草履の音さえ聞えない。
その中にこのごしごしと物を擦り減らすような異な響だけが気になった。
自分の室はもと特等として二間つづきに作られたのを病院の都合で一つずつに分けたものだから、火鉢などの置いてある副室の方は、普通の壁が隣の境になっているが、寝床の敷いてある六畳の方になると、東側に六尺の袋戸棚があって、その傍が芭蕉布の襖ですぐ隣へ往来ができるようになっている。
廊下を歩く看護婦の上草履の音さえ聞えない。
その中にこのごしごしと物を擦り減らすような異な響だけが気になった。
自分の室はもと特等として二間つづきに作られたのを病院の都合で一つずつに分けたものだから、火鉢などの置いてある副室の方は、普通の壁が隣の境になっているが、寝床の敷いてある六畳の方になると、東側に六尺の袋戸棚があって、その傍が芭蕉布の襖ですぐ隣へ往来ができるようになっている。