しまいには上草履を穿いて広い廊下をあちこち散歩し始めた。
その時ふとした事から、偶然ある附添の看護婦と口を利くようになった。
暖かい日の午過食後の運動がてら水仙の水を易えてやろうと思って洗面所へ出て、水道の栓を捩っていると、その看護婦が受持の室の茶器を洗いに来て、例の通り挨拶をしながら、しばらく自分の手にした朱泥の鉢と、その中に盛り上げられたように膨れて見える珠根を眺めていたが、やがてその眼を自分の横顔に移して、この前御入院の時よりもうずっと御顔色が好くなりましたねと、三カ月前の自分と今の自分を比較したような批評をした。